最近、「付加価値の作り方」と言う本を読んで感動すると同時に、前職でのふとした事を思い出したので、ここに記す。

遡る事数年前、職場で使う機械の調子が悪く、自身の仕事に影響するので、直接上司に掛け合って、メーカーの人間を派遣してもらい、メンテナンスをしてもらう事になった。

メーカーのサービスマンは他府県から遠路はるばるやって来て、交通費諸々請求されて、約20数万円のメンテナンスになった。

と、ここまではまぁ普通の話。

で、今回の本題。その修理内容が、よくもまぁこんなもんで金取るなと思ったのと、会社側もそれに対して何も言わないのが、あり得ない…と言う話。

一応修理は終わったが…

さて、修理も無事終わり、説明も一通り受けた。しかし、根本的な問題が解決していなかったので、私はすかさず突っ込んだ質問をした。

私「すいません、ここが直っていないのですが、どう言うことでしょうか?」

修理スタッフ「あぁ、これですね。ここはもう部品が古いのか分からないですけど、直らないみたいですね。なので、これこれこうやって…」

と、「ただの対処療法」を教わった…

私「いやいや、そうではなく、根本的に直らないんですか?」

修理スタッフ「そうですね…原因はこれだと思うんですけど、とりあえずやる事はやったんですけど、直らなかったので、今後同じ症状が出たら、この対処療法で対策してください。お願いします。」

そう言って修理は終わり、メーカーの修理スタッフは帰って行った…

日本の古き良き「職人魂」はどこへ…

さて、このやり取り「話が分かる、頭の良い人」ならお分かりかと思いますが、「え?根本的な問題点が直って無いのに、メーカー帰っちゃったの⁈」と思いませんか?

私もびっくりしたんですけど、会社側も納得してたみたいで(アホなのか?)とりあえず修理は終わった…みたいです…

ハイ、ここで一言、皆さんの言葉を代弁します!

「よくそれで金取るな!(゚∀゚)」

直って無いのにどうしてお金取られた?君は遠路はるばる来て、対処療法を私達に教えに来たのか?とメーカーの人間に言いたい。

副題にもあるが、修理する側もプライドと言うものが無いのだろうか?お客様の為に何とか頑張って修理すると言う「職人魂」は君には無いのか?

工場勤務をしている人なら良く聞くかもしれませんが、「部品が古い、機械が古いので直らない」と言う言い訳は、ある意味では正解なのだが、それを自身の腕前の無さにかこつけて、まるで常套句のように使う人間は私は大嫌いだ。

あくまでもこちらはお金を払っている「お客様」であって、その悩みを解決した場合に対価が払われるのが世の常である。別に客が偉いとかそう言う意味では無く、シンプルに、解決していない問題に対して、今回何故メーカーに対価が支払われたのか謎ですねと言う話。

今回の仕事は、20数万円の価値ある仕事だったのか

さて、今回のこのスタッフの仕事が良かったのか悪かったのかで言うと、

「断然悪い」

が正直な感想であろう。しかも、さらにその評価を下げた理由が、わざわざ遠方から来たのに、実質直った所は、数箇所ある問題点のうち「たった一つだけ」だった事である。

驚くのが、スタッフが意気込んで「ここをこのように改善しておきました!これで使いやすくなったと思います!」と言って直していった部分が、たったひと月で元に戻ってしまったことである!いや、元に戻ったならまだマシで、さらに悪化したと言う方が正しい。これには呆れた。

で、結局悪いのは誰?

最終的にこの機械の一部分は直って、使い易くはなったが、トータルで見ると、根本的な悪い所は直ってないわ、さらに状況が悪化した箇所もあるわで、当時この機械のオペレーターだった私にメリットは少なく、仕事が捗るようになったわけでもなかった…

でも、これを20数万円も支払っていながら、最終的に良しとした、会社側も悪かった。と言うか、シンプルに、解決していない問題に対してなぜその対価を支払ったのか謎である…

もし私が経営者なら、直した直後にまた不具合が出たら、少なくともとりあえず先方に一報入れるだろう。クレームなどではなく、あくまでも、

「すいません、直しに来てもらいましたが、根本的な問題は解決しておらず、むしろ悪化した部分もあるのですが、貴社はその点をどうお考えでしょうか?」と。

当時、会社側も、何故これらの事を強く相手に打ち出していかないのか、全くもって謎だった。だって考えてもみてください。20数万円を払って、

「その機械のオペレーターであった私の問題が解決していなかった」

からです。私の仕事の質は修理後も殆ど変わらず…いやむしろ低下さえしたような、そんなレベルだったのですから。

技術継承の問題点

今回のこの一連の問題から見えた事、学んだ事は、やはり日本ではまともな技術者が減って来ているのかなぁと実感した事。

しっかりと修理できる技術をもった人間が、本来このような修理には来ないと行けないわけですが、そんな人が社内にはもう居ないのかな?と言う印象を受けた。

ただ、私も自転車出張修理を経営している立場なので、修理スタッフの言い分も分からなくもない点もあると言えばある。

たとえば、自転車なんか特にそうですけど、良くお客さんに「どれ位の料金がかかりますか?」と電話で聞かれるが、正直、修理する現物を見ないと、分からない事も多いし、正確な見積もりも絶対取れない。

なので、いくら会社側が、電話口でこの機械が直るかどうか聞いたところで、現物を見ないと正確には分からないので、今回の一連の話も、その辺りは同情します。

実際に直してみて、修理不能と判断する事もあながち間違いではない。直らなかったのにお金を取るのはダメだと声高く言いたいわけでもない。時間と労力に対する対価は、直ってなくても多少は考慮すべきではある。

問題はその修理スタッフのこちらに対する態度の話なのだ。
優れた職人とは、もちろん高いスキルを持っている事は当然ですが、それだけではない。

「お客様の声をヒアリングし、何に悩んでいるかを理解し、その解決策や対策を相手に提示し、しっかりと相手が納得して喜んでくれるような仕事ができるか」である。

それに尽きる。今回の修理の場合、私が納得いかなかったのは、修理スタッフがお客様に対して、「具体的な代替案を示さず、問題の本質を先送りし、対処療法をして帰ってしまった事」である。

実際、後日私達の悩みが解決したわけでも無かっので、これを果たして「修理できた」と判断しても良かったのかと言う事だ。
対価発生条件

今回の修理において、事前に会社側が、メーカーとどのようなやり取りをしたのか私は知らない。機械が古く、「みても直らない事もある」旨を通知されていた上で、それでも修理に来ていたのならまだ分かるが…

それでも、従業員の問題が解決していないのに、相手側に対価が発生している事の違和感は拭えないのだ。